HEX BEAMアンテナの製作

はじめに
ヘックス・ビームは形状が六角形でグラスファイバーロッドとワイヤーエレメントで構成される、2エレエレメントのビームアンテナです。その外観は傘をひっくり返したような形をしています。 ヘックス・ビームは、アンテナエレメント形状から、大きく2つに分類されます。1つは給電エレメントをアルファベットのM型に、反射エレメントをW型にした「トラディショナル・タイプ」、もう一つは反射エレメントをU型した「ブロードバンド・タイプ」です。それそれ一長一短はあるようですが、「トラディショナル・タイプ」は給電部が20Ωと低く、「ブロードバンド・タイプ」は給電部が50Ωとなり自作するには扱いやすいです。

そこまで解っても、実際にHEX BEAMアンテナの実物を見たことがないので製作には二の足を踏んでいましたが、JA1KJW@中山OMがCQ誌2014年5・6月号でにHEX BEAMの製作記事を発表されました。この製作記事はとっても解りやすく解説してありましたので私も作ってみることにしました。ただ紹介されていた物は、21/24/28MHzとなっていましたが、私は最近18MHzに目覚めているので、これを18/21/24MHzに変更して作成する事にしました。(私の使い方だとシングルバンドでも良いのですが、製作そのものを楽しみたかったので3バンドとしました)


基本スペック(市販のG3TXQタイプの値です)
今回製作するのは、反射器がU字になったG3TXQタイプです。 外観は左の写真のように傘をひっくり返したような形をしています。
主要部品は6本のグラスファイバポールを使用したスプレッダと給電ポール(センターポール)からできています。一番難しい部分はスプレッダと給電ポールを止めるクロスマウントの部分だと思います。まずは製作の参考にする為に市販品のスペックを調べてみました。

● 給電ポール上の給電点の位置とスプレッダー上のエレメント接続位置
●エレメント寸法表
バンド   給電線 X 2 反射器    ひも X2  
20M 5537mm 10464mm 609mm
17M 4305mm 8153mm 469mm
15M 3670mm 6969mm 406mm
12M 3091mm 5892mm 342mm
10M 2712mm 5191mm 304mm
6M 1485mm 2857mm 165mm


製作する3バンドHEX BEAMアンテナのスペック
●給電ポール(クロスマウント部と給電部)



● エレメント寸法表
バンド       給電線 X 2 反射器 ひも X 2
17M (18.1MHz) 4305mm 8153mm 469mm
15M (21.1MHz) 3670mm 6969mm 406mm
12M (24.9MHz) 3091mm 5892mm 342mm


メイン材料の選択

< 釣り竿とアルミパイプ >

< コーンバー >

< ダンポール >

<園芸用アルミ線>


ヘックス・ビームはグラスファイバーロッドのスプレッダ給電ポールで構成されています。給電ポールはクロスマウント部と給電部の2つの部分に解れていますが、この部分の部品で基本構造が決まります。固定で使用するなら市販品の用に、スプレッダ用のグラスファイバーも太く丈夫な材料を選定する事になります。ただ私の作るHEX BEAMは移動で使用するアンテナなので強度はそれ程必要としませんので、なるべく軽い物を選ぶ事になります。

給電ポールですが
JA1KJW@中山OMは給電部に釣り竿を使用していますが、グラスファイバの釣竿が簡単に手に入る可能性がなかなか無いと思い、色々探して見つけたのが「コーンバー」と言う物です。工事現場で使っている物です。これ32Φありますが安いです。これで作ろうかなと思ったら、DIYでグラスファイバーの釣り竿が安売りしてまいたので、やはり釣り竿で作ることにしました。次におあずけですね。

スプレッダですが
これは、JA1KJW@中山OMが紹介していた、「ダンポール(FRPポール)」を使用しました。これも色々なサイズがあるようです。園芸や農家で使用するものなので、農協とかに売っているのでしょうか? 家の近くの畑に刺さっているのを見つけました。でも、色々お店を回りましたが、見つからないので結局ネットで注文しました。最近は便利ですね。

エレメントですが
普段はHF用のロングワイヤー(ドイツ製超軽量アンテナ線 エレメント径:約2mmなど)を使うのですが、これだと結構費用がかさむので、まずはJA1KJW@中山OMが紹介していた、園芸用のアルミ線にしてみました。



給電ポールの製作
■給電ポールの材料 (クロスマウント部+給電部のパイプ)
給電ポールは、「クロスマウント部」と「給電部」の2つ部品からできています。給電部は銅通性の無いグラスファイバーで作りますので、この部分のパーツに合わせてクロスマウント部のパイプの径を決定します。 私は都合よく釣り竿が手に入りましたのでこれに合わせて各部の材料を入手しました。

給電部に
 釣り竿  全長3.6m 仕舞寸法 約56cm 外径 約19.1mm

クロスマウント部のパイプに
 アルミポール 25Φ 995m 1本

スプレッダ取り付け用のパイプに
 ステンレスパイプ 9.5Φ 910mm 2本

(※スプレッダに8.5Φのダンポールを使うのでこのパイプの内径が丁度良いのでこれにしました)
■各部の長さ
25Φのアルミパイプを270mmにカットします。そしてこのパイプにスプレッダ取り付け用のパイプの穴を開けます。この穴にパイプを指す事でクロスマウントが完成します。
目からうろこの方法です。この構造なら軽量にできます。強度は若干犠牲になりますが、移動用なので問題ありません。JA1KJW@中山OM流石ですね。

全体の長さは、エレメントの一番長い18MHHzの給電ポイントから670mmとしました。市販品だと18MHzの給電位置は508mmとなっているのですが、仮止めで計測したら私の材料では560mmとなりましたのでこの長さにしました。
■クロスマウント部の加工
クロスマウントの製作が、このアンテナの製作で一番気を使う部分です。
まず、パイプに紙を巻き付けて長さを図り、それを6等分して各穴の位置を決め、印をつけます。そしてその紙を下から80mmの位置に貼り付けて、ポンチで印を付けてからドリルで穴を開けます。最初は3mmのドリルで穴を開けて、希望のサイズまで広げて行きます。

25Φのパイプですと円周が81mmとなりますので1コマが13.5mmです。
■スプレッダ取り付け用パイプの加工

つぎにスプレッダ取り付け用パイプの加工ですがこれには、「ステンレスパイプ 9.5Φ 910mm」を使います。重さを考えると「アルミパイプの 10Φ 1000mm」が良いのですが、肉厚の薄いステンレスパイプの方が内径が大き取れて、8.5Φのダンポールに丁度フィットしますのでこちらにしました。

加工はパイプを真中から切断して、455mmにしてその中心から14mmずらした位置にパイプ固定用の1mmの穴を開けます。この穴にはRピン10mmと言う市販のピンを指して固定します。また、穴の反対側は伸縮チューブを巻いて抜け止めにします。

(※本来はこの部品の長さは500mmとしたいのですが、材料の関係で455mmと45mm短くなってしまいました。しょうがないのでこの長さはスプレッダで調整する事にしました)

■完成したクロスマウントにスプレッダ取り付け用のパイプを差し込んだ所です





スプレッダの製作
■スプレッダ
スプレッダにはダンポール(ビニール・ハウスなどで使用されているFRPポール)を使用します。今回使用するのは、外径 5.5Φと8.5Φ 長さ2.1mの物を使います。これにクロスマウント部への取り付け用のパイプとして ステンレスパイプの 9.5Φ 910mm を使用します。実はこのパイプの全長が910mなので半分にすると455mmとなります。そうすると左の図のステンレスパイプの230mmの実際いの長さは227.5mmとなり1.5mm短くなりますのでご注意ください。(何処かで調整すれば良いので、私は誤差として無視しました)

スプレッダの長さは外周になる18MHzのエレメント接続位置が 2566mm なので、この位置関係から 2660mm としました。JA1KJW@中山OMの製作記事を参考にしながらテスト的にパーツの長さを決めたので、若干延長する形で片側4分割でできています。ダンポールの部分を1215mmを2本にすれば3分割でもOKです。

■スプレッダのジョイント方法


クロスマウントへの取り付け用のパイプには40mm差し込みます。そのままではいくらでも入ってしまいますので、ダンポールには写真の用に伸縮チューブを巻いてストッパーとします。




8.5Φのダンポールどうしは80mmにカットしてたステンレスパイプをダンポールに40mmほどはめてボンドで固定して作成しました。




そして先端の5.5Φのダンポールとの接続は、肉厚0.5mmのアルミパイプ7mmに伸縮チューブを被せて太さを調整し、80mmにカットしてたステンレスパイプに差し込んでボンドで固定しました。これで5.5Φのダンポールを指してもぐらつきはありません。



これで、クロスマウント取り付け用のパイプからの1本棒が完成しました。


ガイワイヤ(支線)
■ガイワイヤ(支線)の製作
スプレッダを支えるのにこのガイワイヤ(支線)を使用します。ガイワイヤにはテグスの10号を使用して3種類のガイワイヤを製作します。

ガイワイヤを作製するのに悩むのが、スプレッダー同士の間隔です。 ヘックス・ビームは中心から6本のスプレッダが出ています。と言う事は内角60度となりますので、正三角形となります。正三角形は3本の辺の長さが全て等しい三角形であると定義されています。 と言う事は中心から各周波数の位置までの長さが、スプレッダとスプレッダの間隔の長さとなります。実はこれに気が付いたのはスプレッダの間隔を測定している時でした。数学をもっと勉強しておくべきでした。

@スプレッダ中間 Aスプレッダ先端 Bポール先端 固定金具

@スプレッダ内側をホールドするガイワイヤ
 この位置に釣具店で見つけたステンレスのリングを付けて 1540mmで等間隔に一周して固定します。

Aスプレッダ外側をホールドするガイワイヤ
 先端に結束バンドで引っかかりを作って 2660mmで等間隔に一周して固定します。

Bポール先端とスプレッダをホールドするガイワイヤ
 ポールの先端に丸いアルミ板を取り付けて等間隔に穴を開けて B−@ の間 1540mmと B−Aの間 2570mmをそれぞれ固定します。


※ ワイヤの固定には色々な金具を試してみましたが、最終的には手芸店で見つけた「カニカン」を利用して固定するのが一番簡単な方法でした。


エレメントと給電部の製作
■給電部及びバランの製作
今回作成している、HEX BEAMは給電点が50Ωとなるので、給電部の構造はいたって簡単で、50Ωの同軸ケーブルを左の図のように加工して、先端にバランを付けポールに固定すれば完成です。 資料によると、このアンテナへの給電は低い周波数からしないといけないようなのでポールの先端の方にバランが行くことになります。

バランはFCZ研究所のトロイダルコア(トロイダルコア 2E2B TRB トミタ電機)で作成しました 。巻き方はFCZ研究所の「スーパーアンテナバラン」と言う方法で、3本の線を撚ったもの(トライファイラ)を4本まとめてトロイダルコアに4回巻きます。これをケースに入れて完成です。




■エレメント固定用のフックの取り付け

※各部の長さはジョイント部の40mmをずらした位置です。

スプレッダ 先端の5.5Φのダンポールにエレメント固定用のフックを取り付けます。フックは結束バンドの頭を伸縮チューブで固定しました。これに右の写真のようにエレメントをひっかけます。特に固定するわけではないので銅通性の無い物でしたら他の部品で代用してもOKです。

■エレメントの製作
エレメントには「園芸用のアルミ線 太さ2.0mm」を使用します。これをエレメント寸法表にしたがってカットして作成します。
エレメントを張ってみると、園芸用のアルミ線は真っ直ぐに張るのは苦労しますが、ACコードなどのように垂れ下がらないので意外に安定します。
■ポールへの接続
ポールへの接続は、給電ポールを差し込むようにして固定(右側のポール)しますが、左側のポールのようにアンテナを固定する突起物が付いているタイプ(市販の4.5mのポールなど)だとトップ部分の直径が大きくなるので、そのままでは差し込む事ができません。そこで、接続用のジョイント金具を作製してみました。
ジョイント金具の構造はいたって簡単で、水道用のパイプを適当な長さにカットして被せてみました。


組み上げと調整
■組み上げ
@給電ポールにスプレッダ取り付け用のパイプをセットして、3分割のスプレッダーを差し込みます。

A次に給電ポールの先端に、ポール先端とスプレッダをホールドするガイワイヤガイワイヤ(支線)を張るために丸いアルミ板をセットします。これにはワイガイヤがセットされていますので、順番にスプレッダーにつなぎます。

Bそして最後に、スプレッダ内側・外側をホールドするガイワイヤを巻き付けて骨組みの完成です。
<骨組みの状態でポールに乗せてみました> <エレメントを張ってみました>

骨組みが完成したら、各バンドのエレメント(園芸用のアルミ線)を高い周波数から張っていきます。 未調整の状態ですが一応アンテナは完成しました。

ところがここで問題をみつけました!
全体的にエレメントがたるんでいます。 エレメントには長さ調整用のヒモの部分があるのですがこれを使ってもまだだぶつきが出ます。理由は給電部からスプレッダーまでの距離やスプレッダー間の距離が計算上より短くなってしまっているようです。市販品のスペックのサイズで製作したのですが、使用パーツの違いによる差(?)が出ているのだと思います。

JA1KJW@中山OMのアンテナスペックを再度調べて見ると(下記スペック表を参照)スプレッダー上の接続位置が若干遠めになっています。(一つ上の周波数の位置に近いですね)OMも製作における誤差を調整しているようです。
21MHzを取ってみても、私のが 2121mm に対して 2275mm と長めに設定されています。もっとOMの記事を熟読すべきでした。このへんは製作をしてみないと解らない点ですね。

今回は実験用に作成しましたので、 若干のたるみはありますがこれでOKとしました。次回に製作するときにはこの点に注意して製作しようと思います。

■調整
アンテナの電気的調整は、エレメント長を調整してのSWR調整、エレメント・スペースや放射器と反射器の長さの比率を微調整する指向性の調整がありますが、まずはエレメントの長さを変化させてSWRを調整します。またアンテナを高く上げると共振周波数は上がります。

組み上げたHEX BEAMを地上高4mに上げてMFJ社の「SWR ANALYZER」で測定してみました。 結果は、各バンドとも運用周波数の範囲では殆ど無調整でSWRが1.5以内に入っていました。指向性の調整は運用テストを兼ねてチェックしたいと思います。


運用
HEX BEAM 左の写真はSWR測定テスト中のアンテナです。KX3を繋いでワッチしてみたら 24MHz CW で「W1AW/5」が聞こえてきたので呼んだらなんとQSOできました。


下の写真は2014年11月の山と無線のフェスティバルで行った、西伊豆の禰宜ノ畑温泉(ねぎのはたおんせん)やまびこ荘での運用風景です。アンテナは張ったものの部屋までケーブルが届かないのでアンテナ直下での受信で終わってしまいました。



ほるす(後藤 @ JR1NNL )