ラジカセ改造 外部入力端子を付ける
改造ラジカセ外観。至ってノーマル | 横には外部入力コネクタがある |
私は安アパートに住んでいますので隣近所への音漏れ対策には気を遣います。特に夜のTV音声は意外にうるさく、できるだけヘッドフォンを使うようにしていますが、長時間付けると耳が押さえつけられて痛くなるので対策が必要でした。そこで、手元にスピーカを置けば小さな音量でも聞こえると考え、最初はスピーカの自作を考えましたが、よく考えると今の時代は安物ラジカセがスピーカとして使えるのではないかと気付きました。そこで家電屋に買いに行ったところ、外部入力があるラジカセって無いんですね〜 ミニコンポにはあるのですが、高価な部類のラジカセでも外部入力がある品種は見あたりませんでした。ずいぶん昔に使っていたラジカセは外部入力があったので、それが当たり前と思っていたのですが・・・・。
たかがそんなことのためにミニコンポを購入する気にはなれないので別の方法を考えてみました。アンプ+スピーカの自作や、FMステレオトランスミッタを自作して外部入力信号をFMラジオで飛ばす方法が思い浮かびましたが、ここは自作の腕の見せ所で、ラジカセを改造して外部入力を付けてしまえばいい!との結論に達し、安物を買って改造することにしました。この記事はその改造の記録です。
できるだけ安物を捜す
改造したラジカセの銘板 |
うまく改造できる保証はありませんので、壊れてもいいようにできるだけ安い機種を選びました。それに安い機種だと構造も簡単で、べーク片面基板でカスタムICや表面実装部品は使われておらず、昔ながらのラジアル部品が中心と考えたらからです。今時の家電製品は小型チップ部品を使っており、パターンを追うのも至難の業になりつつありますが、安い中国製品ならコスト重視でそこまでやっていないでしょう、たぶん・・・・。
重要な?機能としてはステレオ音声対応。そうでないとステレオ放送の時、片チャンネルの音声が聞こえなくて人物の声が抜け落ちることがあるからです。その昔はモノラルTVにビデオをつないで見ていたのですが、音声入力が1チャンネルしかありませんから前述のような音抜けが発生したので。その結果、安売りされていたオーム電機製(まさかAUMじゃないよねぇ・・・)ラジカセに決定(\3000)。この値段でCDプレーヤも付いているのには驚きました。もちろん、中身がどうなっているかは不明ですし、接続図は付属していません。うまく改造できなくてもCDプレーヤだけでも使えれば良しとするか。ちなみにこのラジカセの機能はCDプレーヤ/AM&FMラジオ/カセット再生&録音で、一般的なシングルデッキラジカセです。
ところで、今はダブルデッキのラジカセなんてあるんでしょうか? 今はデジタル化の波に押されてカセットテープはほとんど死滅状態に近いような? メディアはCDやMDが中心ですし、ポータブルオーディオではHDDやフラッシュメモリーのMP3オーディオプレーヤが主流となっています(私もユーザだが)。簡単にはテープが消えて無くなることはないと思いますが、登場の機会は確実に減っていくでしょう。
改造の方針
カセットを殺して外部入力に転用 |
外部入力端子を追加するわけですが、回路のどこにつなげばいいでしょうか? それはオーディオパワーアンプの入力。増幅されてスピーカで音が出ます。ただ、そのままだと音量調整が効かないので、オーディオパワーアンプ入力前段にあるはずの可変抵抗に入れないといけません。しかし、それでも問題が。単純に追加するとせっかくついているラジオやCDの音がアンプに入らず聞くことができません。その対策としてスイッチを追加して外部入力と内部配線を切換が考えられますが、ここで一案。私の場合、カセットテープは使わないので、カセット再生出力に外部入力をつないでしまう。これだったらカセットは使えなくなりますが、ラジオとCDはそのまま使えます。なお、切替スイッチはCD、ラジオ、テープ(OFFを兼ねる)の3ポジションで、テープの位置にすると外部入力になるわけです。ただし、テープの場合、聞くには再生ボタンを押しますが、これが電源スイッチを兼ねています。だからテープのポジションが電源OFFを兼ねているわけで、外部入力で使うにも再生ボタンを押す必要があります(^_^;) これも電源ON/OFFスイッチが無いからなのでしょうがないです。せめて再生ボタンを押してもモータが回らないようにはしようかなぁ。モータの配線を辿り、切断すればいいだけです。そう言われればラジカセって独立した電源スイッチはなくて、テープ=電源OFFになってるのが普通だなぁ。
そういうわけで、CD/テープ/ラジオ切換スイッチの端子のうち、カセット再生出力が入ってくるピンを探し出してパターンカットし、外部入力を接続することにしました。次はその場所を探す作業です。
買ったら分解(^_^;)
今回改造したラジカセの内部構造。基板は機能単位で分割されている模様 |
予想された回路構成と改造方法案 |
帰ったら火も入れずに早速分解(^_^;)。底面のネジを外すと簡単に裏蓋が取れて中身が出てきます。予想通り、コストダウンのため基板は片面、部品はラジアルが大多数。これなら手のつけようがあると一安心。ざっと見た感じではCDの基板が1枚、ラジオの基板が1枚、カセットの基板が1枚、そしてオーディオアンプ基板が1枚という構成でした。おっと、裏蓋には簡単な電源回路が乗っており(整流+コンデンサだけの安定化されてない電源かも)、プラス、マイナスの配線がオーディオアンプ基板だけに入っていました。オーディオアンプ基板上に切替スイッチがあり、ラジオ/CD/カセットを切り替えます。基板上に長いスライドスイッチが乗っており、ラジオ/CD/カセット切替SWを動かすとこのスライドSWが動くようになっていましたので、こいつでソースを切り替えるようです。よって、おそらくは左図のような回路構成になっていると想像できます。
いよいよ改造開始
オーディオアンプ基板表面 (基板を取り外して撮影) |
スイッチ周辺を調査、テープ入力を捜す |
今回の改造目的は外部入力の追加だけなので全部の配線を調べる必要はなく、入力切替スイッチのテープ入力の場所さえわかればいいわけ。で、テープ基板から来る配線を見てみるとオーディオ信号以外に何本もあり、どれがどれだか判別できず。まあ、まじめに基板のパターンを追ってオーディオ増幅系を捜すこともできますが、やっぱ面倒なことはやめて楽をしないといけません。
次の手段としては、切換スイッチから音量調整用可変抵抗に入る配線を追いかけます。ここが分かれば切換スイッチのCOMMONが分かるので、あとはテスターで導通を調べて、切換スイッチの位置がテープの時にCOMMと導通があるピンを捜せばいいという算段です。スイッチのピン配置は下図のようになっており、常識的に考えると3接点の左右どちらかにCOMMがあると予想していました。ただ、一番下の「島」だけは4ピンではなく3ピンというのが解せなかった・・・。3接点+COMMON=4ピンで1組のはずなんですが。まあ、あとでテスターで導通をみれば分かるでしょう。片面基板なのでパターンを追うのは簡単で(といっても片面ではあまりに配線の制限がきつく、部品面にジャンパーピンを取り付けている部分も多く、表裏両方見ないと追いかけられなかった)、可変抵抗から延びる配線を追いかけいくと簡単に見つかりました。予想通りスイッチに入るのは2本だけで、こいつが右チャンネル、左チャンネルのオーディオ信号に間違いないでしょう。 このピンは当初予想と違って妙な位置にあるのです。端にあるとばかり思っていたのですが・・・。
スライドスイッチピンアサイン | 実際の基板でのピンアサイン |
次はカセット入力ピン位置の割り出し。スイッチのCOMMが分かっているので、そこにテスタの片側をつなぎ、スイッチ位置をカセットにして導通があるピンを捜します。すると隣にありました! 配線を辿るとちゃんとカセット基板に行っており間違いないようです。カセット基板から来ている配線を外し(半田付けだったのでパターンカットせずに済んだ)、代わりに外部入力用にシールド線を半田付けします。念のため、ここにビデオのLINE出力を仮付けし、カセットテープを入れずに再生ボタンを押すとちゃんと音が聞こえました! 歪んではいなかったので、正式配線時に抵抗を入れて音量を落とす必要はなさそうです。同様にしてどのピンがどのメディアかを確認すると上のようになってました。配線を追うとその通りで、やっぱ予想通りの単純な回路のようです。ちなみにオーディオアンプは韓国SAMSUNG社製 KA2206で、ネットで調べると2.3Wステレオパワーアンプでした。スライドスイッチの残りの接点は調べていませんが、おそらくは電源切換用でしょう。
以上が今回のラジカセ改造の核心部ですが、たぶん、海外製の安物ラジカセならどれも似たり寄ったりの構造だと思います。メディアを切り替える大型のスライドスイッチを探し、音量ボリュームつながっているピンを捜してCOMMONピン位置を割り出し、テープ入力ピンを捜せばいいはずし、テープを使うという人ならラジオを犠牲にするという手段もあります。どちらにしてもLINEレベルとスイッチでのオーディオレベルが一致するとは限りませんので注意。レベルが低い分は音量ボリュームを上げればいいですが、レベルが大きすぎて歪む場合は、抵抗で分圧して入れればOKでしょう。直列に入れる抵抗値はその時々で異なりますのでカット&トライで決めて下さい。
コネクタ取付+α
テープ出力配線。不要なので丸めておいた | モータ配線は外しておく |
外部入力コネクタは各自の手持ち機材に合わせて選びましょう。一般的なオーディオ機器が相手ならRCAジャックか? 私の所ではDVDレコーダのLINE出力に接続し、そのコネクタがRCAジャックだったのでケーブルは両端がRCAピン。よってラジカセにくっつくコネクタはRCAジャックとなりました。ラジカセの筐体は合成樹脂で穴開けは簡単、邪魔にならない場所に穴を空けてコネクタ取り付けます。このとき、ラジカセを分解したときに裏蓋として取り外されない場所にコネクタをくっつけた方が配線が楽ですし、次に分解したときに破損する可能性が低くなります。
おまけで、テープ駆動部のモータ配線を外します。そうでないと外部入力を聞くのに再生ボタンを押したときにモータが回ります。まあ、回っても支障が出るわけではありませんが、電気は喰うしちょっとだけ騒音が出るので回らないようにしてしまいましょう。ちなみにうちにはテープは1本もありませんので回らなくても問題なし。引っ越しで全部廃棄してしまいました。
以上で完成です。CD及びラジオの動作確認をして動けばOK。格安のアンプ付きスピーカのできあがりです。私は1年近く毎日のように使っていますが故障もなく実用性バッチリ。外見もRCAジャックが側面に飛び出している以外はノーマルなラジカセで目立ちません。
最後に
今の高級電気製品はチップ部品を多用し、カスタムICで小型化/低消費電力化を図っているのでほとんど改造は不可能ですが、安物の電気製品はコストダウンのために昔ながらの作りそのままで、アマチュアが手を加える余地が充分残っています。簡単な改造で応用範囲を広げるのはアマチュアの特権でしょう。今回の改造なんか、買おうとするとミニコンポが必要になってしまう物が安物ラジカセで実現できてしまうのですから実用性も充分です。それに、この程度の改造なら一から回路設計ができない人でも問題なし。まずはこういう経験を重ねて知識を身につけるのがよろしいかと思います。
なお、電源系統には注意。誤配線すると燃えるかも? 今回のような小信号オーディオラインならほとんど被害はないはずです(電源ラインにつながなければ)。あとは感電にも注意。